好況を続ける米国経済と情報技術の発達で新たな市場として成長を続ける欧米のFM(ファシリティマネジメント)業界。 先日札幌で開かれた講演会で上ノ畑淳一氏が報告したその実態は、今後の日本のFM業界だけでなく、建設産業全般にとって一つの方向性を示したと言える。世界の情勢に乗り遅れることのないよう警鐘を鳴らす上ノ畑氏に、日本企業の課題を聞いた。
聞き手=武内正巳記者
日本だけでは難しいだろう。FMはあくまでも支援事業。コアビジネスをしっかりと見据えなければならない。
米国では不況になっても政府は介入せず、企業が自らビジネスプロセスを見直さなければならなかった。結果として本体が変わり、施設運営も変わっただけだ。さらに情報革命が起こり、まったく別の市場が生まれた。
物理的に離れた会社がオンラインで情報を共有化しチームを組んでサービスを提供することが現実になった。需要も多国籍企業を中心に出てきた。
日本は従来の護送船団方式が崩れ、いまでは官庁が方針を打ち出せず、批判を受けどうにも先が見えない状況に陥っている。だから日本国内だけで見るのは難しいと思う。
いま我々が見るべきは事実、理論ではない。市場がどこにあるかを見極めること。世界、この場合は米国のことだが人事管理や資産管理は情報化され、さらに加速している。情報技術の進歩は早く、市場は拡大し導入コストが安くなっている。このような情勢の中で日本だけ違う方向で企業経営ができるか、を見極める必要がある。
ちょうど幕末と同じだ。既得権を最大限温存させ、なんとかできないかと手を打つ幕府。その間にも市場を開放せよという動きは内部から起きてくる。これはけっして劇的な味付けではない。冷静に見ると状況は似ている。
だから外圧しかない。それも昔のような構造協議で市場を開放せよというのではない。電子商取引による市場が大きく成長しつつある。いまない市場が一年後には存在するようになる。いまからでも情報化に取り組むべきだ。
繰り返すようだが企業にとってのグローバル化の一番の特徴は情報化だと思う。情報革命の裾野は広がっている。その業界だけではなく、広い目で見なければならない。インターネットは効率の良い販売ツール。 ホームページを出すのが常識だろう。企業案内だけでもいい。日本語とできれば英語の対訳。Eメールがあれば押すだけで届くようにすればいいし、電話番号だけでもいい。気になったところは電話をしてくる。そうして市場の存在を確認することだ。
CALSはもともと規格品、静的なデータの集まりを対象にしたものだ。FMサービスの場合は、CALSのようなアプローチではなく、コンピューター化された維持保全業務管理システムのCMMSとか、CAFMというコンピューターによる統合された施設経営手法でインターネットポルタルをベースに商取引されていくのではないだろうか。
日本が外れているとは思わない。ただなぜそのシステムが生まれたかを理解する必要がある。性能発注もそう。単純に性能発注の契約事例を持ってきて日本と合わないところは切り捨て改造し使えるというものではない。それでは本来の効果が出てこない。真似したところでベースになるデータがなければ不可能だ。
CALSが悪いわけじゃない。しかし静的データを対象にしているシステムに対して、建設業は流動的なものだ。CALS一本でいくのは難しいのでは。政府が打ち出しているのであれば業界としては追い掛けざるを得ないが、これは問題だ。例えばISDN。米国では選択肢の一つにしか過ぎない。
それを情報インフラ政策として進めるのはある意味でリスキーだ。技術はいま急速に発達、再編成を繰り返している。特定の物だけではなく、適材適所に使うようなフレキシブルな対応が必要なはず。
日本でもISOの取り組みが盛んなようだが、もし政府がISO前提の工事発注を始めているとしたら、従来と同じ。政府が業界を指導する姿勢と、現在のグローバルな情報経済社会とは本質的な違いがある。いま政府主導型をやっているのはたぶん発展途上国。先進国は民間企業の自主努力、改革べースで動いていく。
FMも同じ。政府や協会の言うこと、やることに頼るような企業はそもそもFMも何もやらない。自分でやりたいと思う企業があり、初めて業界が走り出す。政府はそのためのインフラ整備をするだけ。
だから、上の方からくる声を待っているだけでは国際競争社会にはついていけない。
(2000年3月17日北海道建設新聞掲載)
1953年生まれ、東京都出身。FM専門家。慶応義塾大学法学部卒業、79年渡米。82年以降、シリコンバレーを中心にコンピュータのハードの技術系専門通訳として活動を開始。 CADをはじめ、意匠設計を含む建築分野の情報技術の活用とFMを専門に、JFMA(日本FM推進協議会)発足当時から、欧米のFM協会との提携や折衝を支援している。
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